おわりに


落語は得意じゃなかった。得意とか得意じゃないとかじゃなかった、本当は頑張れなかっただけだけど、そういう風に言ったら誤魔化せる気がしただけだった。

落語のいい所は、1人で完結できるところ。落語の悪い所は、1人で完結してしまうところ。演劇みたいに、他の人と熱量やスタンスが合わなくてイライラすることがないと思えば、窮地に陥った時に助けてくれる人もいない。本当はそうじゃないのかもしれないけど、孤独なのが耐えられなかったのかもしれない。その印に、稽古するのが本当に苦痛なくせに、反応が返ってくる場、つまり本番、終わったあとにはまた落語してもいいかな、って思ったりする。自分に向き合えないし、努力もできないし、最後まで本当に、あの子の隣に立つに値しないなぁ、と思って、でもやっぱり努力も出来なくて、なんか…馬鹿らしいんだけど。やればいいだけの話。私にはその勇気がなかったというだけで。こればっかりは本当に、後悔したって、って感じ。だって、過去は変えられない、タイムワープでもしない限り、ね。2代目は居ませんし。


一生忘れないと思う。落研に心が揺れたこと、初めて落語が面白いと思ったこと、大好きな先輩たち、可愛い後輩たち、だいじなだいじな同期たち。紛れもなく青春だったし、きっとこれからも輝いているんだろうなと思う。私は心の壁がないように見えてかなり厚いタイプなので、言えないけどずっと君たちが好きだよ。大事だし、幸せを祈っている、君たちが思うよりもずっと。私のことも、覚えていてくれますように。夢が覚めないように。



鉄壁

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